新学習指導要領の『生きる力』とマインクラフト

マイクラと学び

新学習指導要領の『生きる力』とマインクラフト

社会の変化に合わせて、子どもたちの教育目的や学習方法も変わってゆきます。

日本では、2020年度以降、新しい学習指導要領1が段階的に全面実施され、全国の学校の教育課程の基準が刷新されました。

この新学習指導要領で掲げられた『生きる力』と、マイクラの教育効果は共通点が多いです。

この記事では、新学習指導要領の内容を押さえつつ、マイクラを利用した学びとの相性を考えてみたいと思います。

目次


新学習指導要領が目指す、育みたい力

学習指導要領は『学校で学んだことが,子供たちの「生きる力」となって,明日に,そしてその先の人生につながってほしい。』という構想のもと策定されています。

新しくなった学習指導要領が目指す、これからの時代を生きる力を確認していきます。

新学習指導要領が目指す育成すべき資質と能力、三つの柱

新学習指導要領では、子どもたちに必要な力を三つの柱として整理しています。

Sea 出展 育成すべき資質・能力の三つの柱 - 文部科学省

知識や技能を受け身で学ぶだけでなく、『学んだ知識や技能』を『どのように使い』『人生や社会にどう生かすか』という3つの柱をバランスよく育むことを目指しています。

新学習指導要領で勧めるアクティブ・ラーニング

上記で挙げた資質・能力の3つの柱をバランスよく育てるため、新学習指導要領では、アクティブ・ラーニングの視点を取り入れた授業改善を勧めています。

アクティブ・ラーニングとは、子どもたちの頭の中がアクティブ(能動的)に働き、主体的・対話的で深い学びにつながる学習方法のこと。

具体的には主体的、対話的で深い学びの視点からの授業改善を提案しています。

  • 主体的な学び:見通しをもって、粘り強く取り組む力が身に付く授業に
  • 主体的な学び:自分の学びを振り返り、次の学びや生活に生かす力を育む授業に
  • 対話的な学び:周りの人たちと共に考え、学び、新しい発見や豊かな発想が生まれる授業に
  • 深い学び:一つ一つの知識がつながり、「わかった!」「おもしろい!」と思える授業に

Sea 出展 主体的・対話的で深い学びの実現 - 文部科学省


マインクラフトとアクティブ・ラーニング

マインクラフトは、そのゲームの特性から、アクティブ・ラーニングとは相性抜群。

具体例として<span style=”color:#1589FF”北海道北海道仁頃小学校の野尻先生の記事</span>を参考に、アクティブ・ラーニングとして機能し、主体的・対話的で深い学びにつながっている部分を抜き出してみます。

このプロジェクトでは、閉校に向かう学校を残すため、小学校3−6年生の生徒で、マイクラの世界に学校を再現したそうです。

【対話的な学び】周りの人たちと自然な協力関係が生まれた

ある生徒が壁を作る作業中に黒板を作りたくて、他の生徒にやり方を尋ねたのですが、その生徒は早速自分がどうやったかを共有して作業を進めていました。 生徒たちはお友達を助けたり、自分が学んだことを披露できることに夢中になっていました。

対話的な学びとは、周りの人たちと共に考え、学び、新しい発見や豊かな発想が生まれるような学びです。マイクラを利用した授業では、お互いの知識を共有して協働作業する場が生まれやすく、対話的な学びの促進につながっています。


【主体的な学び・深い学び】授業で学んだことを制作に生かすことができ、また、制作することで対象の細部や技術への理解が深まる

例えば、生徒達は最初に測りを手に学校や物品のサイズを測り、算数の授業で習った比率を使って縮図を作りました。また完成に近づいてからは図工で培ったデザインスキルを使って、実物の写真とマイクラの世界を見比べながら修正を加えました。 途中から参加した小学校3、4年生の生徒達は、社会で学んでいた地域学習で地図を作っていたので、それを生かして学校周りの家や道路を作ってもらいました。

主体的な学びを育む授業では、自分の学びを振り返り、次の学びや生活に生かすサイクルが回ることを目指しています。 この例では、算数や図工、社会などで学んだ知識を活用して制作を進めていました。

この例は、学校の教科とうまく融合することで、子どもたちが学んだ知識や技術を自分で使い、表現する主体的な学びにつなげる可能性を示していると思います。

また作りたい対象を分析的に理解して、制作する過程では、これまで気づかなかった細部を知るきっかけになったり、学校で学んだ知識と生活を支える技術とのつながりに気づいたりして、深い学びにもなっていると言えそうです。


【主体的な学び】目標を持って粘り強く取り組む

ある生徒は蛍光灯にどのブロックを使えばいいか、他の生徒に相談しました。ランタンが候補にあがりましたが、なかなか思い通りになりません。色々試すうちに、シーランタンがちょうどいいということになり、レバーを組み合わせて、まさにイメージ通りのものを完成させていました。 例えばある生徒は、面倒な整地作業が、エージェントを使えば作業を楽にできると気づきました。そこから分厚いガイドブックを手に何度もプログラムを修正して、家でも練習し、ついに整地をしてくれるプログラムが完成しました。当然ながら、彼はクラスで引っ張りだこになり、知識をみんなと共有していました。

この例に見られるように、試行錯誤しながら修正や改善をおこなったり、達成したい目的を定めて努力したりといった姿は、見通しをもって、粘り強く取り組む力が身に付く主体的な学びになっていました。

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以上のように、アクティブ・ラーニングで目指される、主体的、対話的で深い学びが、マイクラを使ったプロジェクト型の授業で見事に実現されていました。

この例は、閉校する学校を残したいという強い動機づけがあった特別な例ではありますが、お友達同士で協力したり、学んだことを活かして作りたい対象をより詳しく、分析的に学んだり、試行錯誤しながらイメージ通りのものを作る様子は、普段から子ども達がマイクラで遊んでいる様子をみていても垣間見れます。

マイクラは、子どもたちの『やりたい』というモチベーションを元に、能動的に学びに向かう環境を作り出してくれます。


まとめ

この記事では、新学習指導要領の要点を確認しつつ、マイクラを利用した学習の一例を取り上げました。

新学習指導要領では、これからの時代を『生きる力』の育成に向けてアクティブ・ラーニングの視点からの授業改善を提案しています。

その点、マイクラは、子どもたちが自分から行動したくなる場を作り出し、主体的・対話的で深い学びを促してくれる理想的なプラットフォームと言えそうです。

実際のところ、学校で取り入れるのはまだまだハードルが高いかもしれませんが、ゲームであるマイクラは学校外でもやりやすい点も強みです。

お家で遊ぶ際にも、例えば夏休みにプチプロジェクトを立てみたり、Minecraftカップに参加してみるなど、ちょっとした挑戦があると、それが刺激になり、より一層楽しめたり、学びの効果も高くなるのではないかなと思いました。


参考

  1. 学習指導要領「生きる力」保護者用パンフレット - 文部科学省
  2. 主体的・対話的で深い学びの 視点からの授業改善 - 文部科学省
  3. Creation as an act of memory: Preserving a closing school in Minecraft - Mincraft Education


脚注

  1. 「学習指導要領」とは、文部科学省が定めている教育課程の基準で、子供たちの教科書や時間割は、これを基に作られています。